「芸術の本質は“人間を取り戻すこと”」――大野木啓人評議員が京都芸術大学の使命を語る(26/09/2025)

京都国際平和構築センターの評議会において、同センター評議員である大野木啓人氏が、芸術の意義と京都芸術大学の果たすべき役割について、強い信念を込めて語った。

大野木氏はまず、「現在、社会で共有されている芸術の概念は非常に凝り固まっている」と指摘し、「本来“藝術立国”を掲げる以上、芸術とは何か、その役割を明確に示す必要がある」と述べた。

続けて、「本学が芸術を教育の中心に据えている理由は、“世の中をつくる”という大きな目標にある」とし、その意義が十分に理解されていない現状を憂慮した。「一人ひとりのオリジナリティをいかに育み、個人の人権をいかに認めるか――これこそが芸術の方法論である」と強調し、芸術教育の本質を「人間中心の学び」に見出した。

また、自身が教育活動で訪れている中国・上海での経験を踏まえ、「中国の教育は依然として旧態依然としており、個々の人間を尊重して扱う視点が欠けている」と指摘。「だからこそ、彼ら一人一人を救うためにも、この大学の存在は不可欠である」と語った。

さらに、京都芸術大学が今後迎える50周年を見据え、「サミットを開くにしても、何を発信するにしても、我々の基点は“人間を取り戻すこと”“すべての人が幸福になること”である」と述べ、その実現には政治や経済ではなく、芸術的思考が必要だと訴えた。「競争原理に基づくシステムの中では、人々が本当の幸福を掴むことは難しい。特に政治のスローガンは、私には空虚に響く」と言及した。

最後に大野木氏は、「本学は次のステージに進むべきであり、日本国内にとどまらず、世界の中で目標とされる存在になりたい」と力強く述べ、「日本においては東京大学を超える大学を目指す気概を持っている」と語った。そして、「皆さんのお力を借りながら、共にその道を歩んでいきたい」と結び、会場に大きな共感を呼んだ。

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(レポーター 井門孝紀)

 

発言原文

大野木啓人 京都国際平和構築センター評議員

今、芸術に関して共有されている概念は、私から見ると非常に凝り固まっていると感じる。本来「藝術立国」と掲げている以上、芸術とはいったいどのような役割を果たすものなのか、明確には示されていないのではないかと思う。
しかし、我々の大学が芸術を教育の中心に据えている理由は、あくまで「世の中をつくる」という大きな目標にある。その意味を多くの人は十分理解できていないように思う。最も分かりやすい例を挙げれば、我々は一人ひとりのオリジナリティをいかに育み、個人の人権をいかに認めるか――これこそが芸術の基本的方法論である。
私は積極的に中国へ教育に行っているが、上海などで感じるのは、中国の教育が非常に旧態依然としており、個々の人間を一人一人尊重して扱う視点が希薄であるということである。だからこそ、彼らを藝術でどう救うかという使命のもとに、この大学の存在は必要不可欠だと思う。
来たる50周年を迎えるにあたり、サミットを開くにしても、何を発信するにしても、我々の基点は「一人一人の人間を取り戻すこと」「すべての人が幸福になること」である。そこに至る方法論を探求してほしい。それは政治や経済では決して実現できない。競争原理に基づくシステムの中では、人々が本当の幸福を掴むことは難しい。特に政治のスローガンは、私には空虚に響く。
だからこそ、本学は次のステージに進むべきであり、日本国内にとどまらず世界の中で目標とされる存在になりたい。日本においては東京大学を超えるような大学を目指す気概を持っている。そのために、今後も皆さんのお力を借りながら進んでいきたいと考えている。どうぞよろしくお願いする。

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