(私の視点)PKO強化のために「三角」協力活動を拡大すべき (10/01/2019)

 国連上級担当官 伊東孝一氏が朝日新聞への投稿で、国連平和維持活動(PKO)の施設整備や通信の能力強化の取り組みとして日本が提唱したアフリカでの支援活動が実績をあげてきている三角パートナーシップを、アジアなど活動地域と医療分野への拡大の可能性に関して言及された。


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(私の視点)PKO強化のために 協働の「三角」拡大したい 伊東孝一

伊東孝一さん

 近年アフリカにおいて、国連平和維持活動(PKO)の施設整備や通信の能力強化の取り組みとして実績をあげてきた三角パートナーシップが、アジア、医療分野へ拡大する。

 近年アフリカにおいて、国連平和維持活動(PKO)の施設整備や通信の能力強化の取り組みとして実績をあげてきた三角パートナーシップが、アジア、医療分野へ拡大する。

 私は、国連本部のあるニューヨークとPKOの現場を行き来して実務にあたってきた。実感したのは、国連安保理から課される「平和」を維持するための多くの任務を全うできる要員を派遣できる国は少ないということ。PKO強化には異なる強みと弱みを持つ国々が協力出来る仕組みが必要ということだ。2017年に61人ものPKO要員が攻撃を受け殉職した。特に死傷者の多いマリや中央アフリカでは、維持すべき「平和」すら無いのが実情でPKO要員の能力強化が急務となっている。

 開発途上国の中には、要員を派遣できても、装備品の準備や要員の訓練が不十分な国々がある。また、飲酒運転や、性的暴行に及ぶような要員を派遣してしまった国もある。

 他方、私が勤務した東ティモールをはじめ、ハイチや南スーダンでも自衛隊は道路の修復や人々の生活再建支援などで活躍してきた。また日本は、これまでに1万人以上の要員をPKOに派遣しながら、一件の不祥事もない。南スーダン以降、日本は部隊派遣していないが、技能も規律も高い日本のような国がPKOに関与し続けることへの期待は高い。

 こうした中、私は同僚らと2015年に各国が協力してPKOに貢献できるよう(1)要員派遣国(訓練や装備品の準備で支援を希望する国)、(2)財政・人的貢献する支援国、(3)国連、の三者間の協力の仕組み「三角パートナーシップ」を立ち上げた。

 これまで、アフリカでは、314人に重機訓練、2千人以上に通信訓練を実施した。昨年11月からは、主としてアジアの要員を対象とした重機訓練も開始し、今年には医療の訓練もアフリカで開始する。

 最近、日本のPKOへの貢献の低下を嘆く日本の識者の話をよく耳にする。各国の国連への貢献は、経済を含めた国ごとの事情や国益との兼ね合いという側面がある。国連の責務は、それらを十分理解した上で世界平和という国際益の実現につなげていくことにあると私は考えている。

 三角パートナーシップの最初の支援国として名乗りを上げた日本は、重機操作の教官として自衛隊員を派遣し、83億円の財政貢献も行い、国際社会から高く評価されている。すでに、日本に続き、スイス、ブラジル、イスラエル、デンマークが支援国として「三角」に参画している。

 三角パートナーシップの最大の魅力は、施設、通信、医療に限らずあらゆる分野に応用が可能なことと、各国が得意分野で貢献できることにある。今後も支援国を増やし、三角を拡大し、PKOが必要のない世界の実現に向け、協働していきたい。

伊藤 孝一 (いとう たかかず 国連上席企画官〈運用支援〉)


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 伊藤孝一氏は去年の2018年11月に、日本国際平和構築協会において、三角パートナーシップに関して図形を使用して講演をした。


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