ACUNS(国連システム学術評議会)会長のフランツ・バウマン氏が司会を務めるハイブリッド形式の円卓会議で、アジアの研究者たちが「激動の時代における国連の効果的な役割」について意見を交わした(記者:キハラハント愛) (24/06/2025)

本セッションは、議長を務めたバウマン会長の下、以下の研究者が参加して開かれた。Yunfei Zhang(UNU‐China)、勝間靖(早稲田大学)、Young Hoon Song(江原大学)、Tu Xinquan(対外経済貿易大学)、植木安弘(上智大学)、DongJoon Park(済州平和研究所・KACUNS事務総長)。 詳細はこちらをご覧ください。

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Young Hoon Song教授(江原大学)
バングラデシュのコックスバザール難民キャンプでの調査を踏まえ、ロヒンギャ難民の一部が帰還を望み、別の一部が定住を望む理由、そして東アジア諸国がどのように支援できるかを論じた。難民が受ける教育課程が一因であり、学習センターの予算削減が問題だと指摘。東アジア諸国が教育事業に資金提供できると提案した。参加者から「難民は現地での教育を望むのか、他地域を希望するのか」との質問があり、Song教授は、キャンプ外への外出は禁止されているため多くが内部で教育を受けているが、他地域への移住を選ぶ人々もおり、東アジアの大学で教育を受けられる道を示した。

Yunfei Zhang教授
技術開発を管理し、気候と生物多様性に取り組むため国連が結束する必要性を指摘。中国は持続可能性、多様性、カーボンニュートラルのために多国間主義を支持していると述べ、共通の目標に向けた協働を訴えた。

■ 植木安弘教授
多国間主義の課題・影響・解決策を示した。課題には、米国の多国間主義離脱、力の政治(武力行使規範を無視した不処罰)、リベラル価値と人権の低下、新科学技術と情報操作、国連機関の乱立が含まれる。影響として、機能不全の安保理、軍事費増大と国際援助縮小、国連の予算・人員削減、気候変動対策への逆風、移民保護の危機、人権侵害の横行、国際法の弱体化、民主主義原則の形骸化を挙げた。解決策として、機関統合、2年ごとの予算審議への回帰、事務局の組織統合、安保理改革、理念面でのリーダーシップ、UN価値観を若者に教育、戦略的コミュニケーション能力の強化を提案した。

Tu Xinquan 教授
多国間主義は戦後最大の成果と指摘。近年、主要国の一部が多国間ルールを放棄し「弱肉強食」に回帰していると警鐘を鳴らした。他国は米国に追随すべきでなく、中堅国が希望を失わず連帯することが重要だと述べた。WTOの核心原則である無差別待遇を維持すべきで、中国は1971年以降、多国間主義を支持し続けていると強調した。

■ 勝間靖教授
大学が国連の気候変動・持続可能な開発アジェンダを支援する役割を説明。UNITAR、UNUなど国連内部の研究・研修機関を紹介したうえで、UN Academic Impact(UNAI、2010年)、Higher Education Sustainability Initiative(HESI、2012年)など大学への働きかけを紹介。ACUNSは独立した国連研究者の団体で、そのモデルは日本(JAUNS)、韓国(KACUNS)、中国(CANUNS)にも広がった。大学発の自発的イニシアティブとしてサステナブル・キャンパス・ネットワークなども挙げ、UNU-IASが設立したRCE、ProSPER.Net、SDG-Universities Platform(SDG-UP)を紹介し、大学と国連の連携を促した。

DongJoon Park教授
各発表を総括。第一に、世界および国連が直面する困難を指摘し、北東アジアでの国連改革への高い関心を紹介。三国(日本・韓国・中国)が包摂性と効率性のバランスをどう取るかを問い掛けた。第二に、地域協力では国別ではなく一体的な対応策の検討を提案。第三に、国内レベルでの継続的な意識啓発の重要性を強調し、ACUNSとその会員が非政府アクターとして重要な役割を担えると述べた。

討議では、米国のパリ協定離脱を受け北東アジア諸国が何をすべきかとの質問があり、Park教授はアジア諸国、特にASEANと北東アジア諸国の緊密な協力を提案。植木教授は、三国がコミットメントを堅持し、環境・気候問題で協力し続ける必要があると応じ、あらゆるレベルでの対話と若者の声を聴く重要性を指摘した。

最後にフランツ・バウマン議長が参加者に謝意を表し、セッションを締めくくった。

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