京都国際平和構築センター(KPC)の執行委員である中山博喜氏が、2025年度評議会において、これまでの活動成果と今後の展望について詳しく報告した。発言では、国連学術会議(ACUNS)との連携、芸術と平和を結ぶ教育活動、そして2027年の学園創立50周年に向けた構想が紹介され、KPCの歩みと今後の方向性が示された。
まず中山氏は、昨年日本で初めて開催されたACUNS年次総会を振り返り、KPCが主導的に参画したことを報告した。KPCは2022年よりACUNS日本ブランチオフィスとしての機能を開始したが、今年5月にウィーンで契約更新が行われ、引き続き国際連携を継続していくことが決定した。また、ACUNSが2027年に開催予定の瓜生山学園創立50周年記念事業に正式に参加することも合意された。
次に、教育活動の取り組みとして、2022年に開講した一般公開講座「芸術と平和」シリーズを紹介した。これまでに舞台芸術や映像、写真、食、文化財保存など、さまざまな角度から芸術と平和の関係性を探究してきた。昨年度(2024年度)は、文化財保存と平和構築のつながりを考察する講座を実施した。さらに、2027年の学園創立50周年に向けた企画「アジアアートフォーラム(仮称)」の構想を説明した。このプロジェクトは、①アジア諸国との芸術交流の深化、②芸術と平和の関係性を考える発表と議論の場の創出、③学生・教員・評議員が自由に意見を交わすプラットフォームの構築――の三つを柱としている。すでに今年11月には「アジア美術系大学学生会議」の開催が予定され、100名を超える応募が寄せられている。また、アジア芸術教育協議体(ALIA)との連携による総会開催や、ACUNSのバウマン会長を基調講演者として招聘する方向でも調整が進んでいる。
最後に中山氏は、「一万人のキューブアート(仮称)」構想を紹介した。学生たちが「平和」をテーマに制作した立方体アートを一堂に展示するもので、ギネス記録規模を目指した大規模なアートイベントとなる予定である。
中山氏は、「これらの活動を通して、芸術を軸に平和を創るという理念を社会に広めていきたい」と述べ、今後の発展に向けた意気込みを示した。
発言の全文や、評議会の詳細はこちらからご覧ください。
【発言全文(日本語)】
昨年、ACUNSの年次総会が日本で初めて開催され、KPCも参画した。今年6月19日には国会において会合を行い、その後ACUNS総会のレセプションにおいては本学の教員による発表があり、さらに国連大学では初めて狂言が上演された。また、多くの分科会においても本学の先生方、さらには評議員の先生方のお力添えをいただき、分科会を実施することができた。
現在、本学にはACUNSの日本ブランチオフィスが置かれている。これは2022年に契約を結び、3年間運営してきたが、今年5月に徳山理事長がウィーンを訪れ、昨年の総会で会長に就任したバウマン氏と協議し、ブランチオフィスとしての機能を継続する契約を更新した。同時に、2027年の学園創立50周年記念行事への参加についても合意を得ることができた。
次に、学内での教育活動について触れる。2022年から、社会人を対象に「芸術と平和」を考える講座を一般公開講座として企画してきた。1年目は音楽教育をテーマに、芸術活動に携わる社会人が自身の活動と社会や平和との関わりを考える機会を提供した。2年目はウクライナ情勢を受けて舞台芸術、特にロシアのバレエを取り上げ、神余先生の協力を得て開催した。3年目は映像・写真・食をテーマに芸術と平和の関係性を探究し、昨年は文化財保存を題材に東京文化財研究所や本学の教授と協働し、世界の文化財保存の現場と平和構築の結びつきについて考察した。今年度についてはテーマを検討中であるが、皆様の経験を取り入れながら企画していきたい。
さらに、2027年の学園創立50周年記念アートイベントについても計画を進めている。大きく三つの柱がある。第一に「芸術立国」の理念に基づき、アジア圏の大学や学生との交流を深める場をつくること。第二に、芸術と平和の関係性を考える発表と議論の場を構築すること。第三に、学生や教員だけでなく評議員の先生方にも参加いただき、自由に意見を交わすプラットフォームを形成することである。この企画は「アジアアートフォーラム(仮称)」とし、名称も広く募集中である。すでに今年11月には「アジア技術系大学学生会議」が予定され、100名を超える応募があり、現在選抜を進めている。これはICA京都が主催しており、所長の片岡真実教授(森美術館館長)を中心に2027年のフォーラムを準備している。
また、ARIA(アジア芸術教育協議体)とも連携し、2027年には学生だけでなく加盟大学関係者を招き、総会を本学で開催することを検討している。さらに、ACUNSのバウマン会長を招聘し、基調講演を依頼する方向で調整中である。
もう一つの構想として「一万人のキューブアート(仮称)」がある。学生たちが「平和」をテーマに制作したキューブアートを一堂に展示するもので、ギネス記録を目指す規模での実施を検討している。
これらの企画はすべて2027年10月に開催する予定であり、評議員の先生方にも積極的にご参加いただき、意見交換の場を共に築きたいと考えている。以上が今年度の活動報告である。
(レポーター 井門孝紀)