国連広報センターの根本かおる所長は、冷戦終結期の国連への期待と現在の厳しい国際環境を対比し、マーガレット・サッチャーの言葉「国連は加盟国の意思の写し鏡」を引用して、国連の機能は各国政府の意思に依存すると強調した。一国では安全保障も気候変動も解決できない現実を踏まえ、国益と国際益の接点を探る外交の舞台として国連を強化すべきと訴えた。さらに日本の国連加盟70周年を機に多国間主義の機運醸成を呼びかけ、世界連邦日本国会委員会の国会決議の実現にも期待を述べた。
レポーター:井門孝紀
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発言全文
根本かおる 国際連合広報センター所長
国連広報センターの所長を務めている根本である。
世界連邦日本国会委員会の皆様には、このような貴重な機会を設けていただき、心より感謝申し上げる。
私は、国連が冷戦の終結によって新たな可能性を期待された1990年代に、緒方貞子さんがトップを務めていた国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に入職した。当時は国連に対する期待が非常に高まっており、その「ユーフォリア(高揚感)」を今でも鮮明に覚えている。しかし、当時と比べると、現在の国際情勢は極めて厳しいものに変化したと実感している。
1985年、国連創設40周年記念会合において、英国のマーガレット・サッチャー首相が「国連とは加盟国の意思の写し鏡である。国連が気に入らないからといって、鏡を呪っても意味はない。まず自分たちの姿勢を正さなければならない」と語った。この言葉は、まさに今日の国連を象徴している。
国連という普遍的な国際機関の場を生かすも殺すも、それは加盟国政府の意思次第である。今日のようにグローバル化が進んだ国際社会では、一国のみで安全保障も気候変動も解決することは不可能である。したがって、国連という場は「国益」と「国際益」の接点を探る外交の舞台であり、国連の強化はすなわち国益の強化につながる。
この点をぜひ、加盟国政府および政治指導者の皆様に改めて認識していただきたいと思っている。
来年は日本の国連加盟70周年にあたる。日本は「欠乏からの自由」と「恐怖からの自由」という人間の安全保障の理念を国際協力の軸として掲げてきた。日本の国連加盟70周年という節目の年にあたり、ぜひ多国間主義の強化に向けてさらなる機運を高めていただきたい。
先ほど海江田事務総長からも、国会決議に関するお話があった。ぜひその実現に向けて取り組んでいただけることを願っている。
どうもありがとうございました。




