「本音でぶつかる国連」を—軍事費2.7兆ドルの時代に必要な率直な対話(ハジアリッチ秀子 UNDP駐日代表)(27/10/2025)

UNDP駐日代表のハジアリッチ秀子氏は、マルチラテラリズムの枠外にいれば排除感が生じる現実に触れ、国連が機能するための前提は加盟国の政治的意思と行動だと強調した。スーダンの人道支援ニーズの大きさに比して国際的関心が薄い実情や、世界の軍事費が2024年に2.7兆ドルへ達した事実を示し、形式論ではなく経済の現実に根ざした「本音の議論」を国連で行う必要性を訴えた。さらに総会の「国際平和共存デー」決議をめぐる投票言説に触れ、SDGsは左右を超えた普遍的価値であると強調した。
レポーター:井門孝紀
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発言全文

ハジアリッチ秀子 国連開発計画 駐日事務所 駐日代表
このような機会をいただき、誠にありがとうございます。

本日はマルチラテラリズム(多国間主義)について議論しているが、現在の国際社会では、「その枠組みの中に入っていなければ排除されているように感じる」という現実があるように思う。国連が機能するためには、加盟国の政治的意思と行動力が何よりも重要である。

たとえば、スーダンでは現在 2500 万人が人道支援を必要としているにもかかわらず、メディアの関心は極めて低い。多くの国が関与しているが、スーダンがアフリカ第 3位の金産出国であるという経済的要素も背景にある。だからこそ、国連は「本音で意見をぶつけ合う場」でなければならない。形式的な議論ではなく、経済の現実を踏まえた率直な対話が求められている。

最近、現国連軍縮担当上級代表・国連事務次長で元UNDP局長・国連事務次長補の中満泉氏(元UNHCR職員)が発表した報告書によれば、2024 年における世界の軍事支出は 2.7兆ドルに達しており、これはアフリカ 54 か国すべての GDPを合わせた額と同等である。
この現実を踏まえ、各国が率直に議論する必要があると考える。

また、今年 3月の国連総会では「国際平和共存デー」に関する決議が採択されたが、アメリカ、イスラエル、アルゼンチンは反対票を投じた。その理由として「SDGsという言葉が含まれているから」という説明がなされた。アメリカ代表は「SDGsはグローバリストの概念であり、選挙で敗北した考え方だ」と発言した。

しかし、私は国連職員として強く訴えたい。SDGsは右でも左でもなく、人類共通の普遍的価値である。たとえば、現在 1億 3800 万人の子どもたちが児童労働に苦しんでいる。これはSDGsの明確なターゲットであり、いかなる政治的立場であっても、必ず取り組むべき課題である。

今後も加盟国の皆様の助言を得ながら、国際社会の一員として全力で取り組んでいきたい。
ありがとうございました。

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